思いついたときに書く日記

ふと思ったことや趣味のことを気ままに書いています

読書感想 #1 : NationalStoryProject

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ちょっと気分転換で、最近読んだ本を紹介します。

読んだ本は「ナショナルストーリープロジェクト」です。

 

NatioanalStoryProjectとは

あるラジオ番組のプロジェクト名です。

作家のポール・オールスターはレギュラーでNPR(全米公共ラジオ)のラジオ番組に出てみないかと誘われます。

どんな番組にするか悩んだ彼は、視聴者に短い物語を募集し、それを朗読することを思いつきます。

彼が求めたのは事実のようでない実話。主婦、学生、元軍人、受刑者など様々な年代や立場の人々からたくさんの物語が届きます。

この本には、放送された物語の中から厳選された180話が収められています。

原題は収録された物語のタイトルの一つの「I thought my father was god」ですが、翻訳者の柴田元幸さんがラジオのプロジェクト名の方がこの本のことをよく表していると考え、日本語訳のタイトルは「ナショナルストーリープロジェクト」にしたそうです。

 

この本を知ったきっかけ

NHKで金曜日の22時に放送されていた竹野内豊さん主演の「この声をきみに」というドラマでこの本を知りました。

小さな朗読教室に集まる人たちのドラマで、それぞれの登場人物の思いに関連するお話や詩が毎週朗読されます。

朗読された物語の中で「数学的媚薬」という話が心に残り、あとで読もうとメモを取っていたことを思い出して読んでみました。

 

本の構成

各物語は動物、物、家族、スラップスティック(コメディの一種)、見知らぬ隣人、戦争、愛、死、夢、瞑想の8つのカテゴリーに分けられています。

これらのカテゴリーは物語の芯になっているものです。

 

私の好きな物語

私の好きな話を3つご紹介します。

  • ザッツ・エンターテイメント

周りに人がいなかったことをいいことに海で裸で泳いだ作者は、洋服を潮に流され失くしてしまいます。家は海から50m程...誰かが近づく気配がしたので、走って家まで帰ろうと決意します。帰宅途中、ある家の空きっぱなしのドアから向こう側が見えたので、その家を通り抜けて近道をしようとしますが、そこで予想していなかったトラブルが発生する...

ツッコミどころ満載で思わず吹き出してしまう話です。

  • 人生の縮図

夫と離婚した作者が何年も子どもの親権争いをしていたときの話です。

夫は弁護士、自分は病気の妹と年老いた両親の世話をしながら二人の子どもを育てている...裁判でも勝ち目はないと作者自身思っていた当時の心境が心に残りました。

その何年も前から私は祈りはじめていた。いや、祈るというより、聞いてくれる人誰かに話をしていた。

...

どういう形でもいいから助けてくださいと頼み、どうにもならないことに対処する強さと勇気を与えてくれるように頼んだ。

切羽詰まっていたはずなのに対処する強さを願うなんて、なんて強い人なんだろうと思いました。

この物語に限らずこの本に出てくる登場人物たちは、どうにもなりそうにならない状況でも、希望を持っている人が多かった気がしました。それはこの物語に書かれているように、心の支えになる何かがあるからなのかなと思いました。自分の中にはない感覚だったので ちょっと新鮮な話でした。

  • 数学的媚薬

最近気まずい関係あったある恋人たちの話です。

仲たがいをしょっちゅうしていた恋人と、これからは気軽な関係でいようと二人で決めて間もないクリスマスの次の日に、恋人から手編みの長方形のものをプレゼントされます。両面に数字が編み込まれていて、数字の意味を尋ねると、数学好きの作者と編み物好きの彼をつなぐ意味が込められた数字だったのです...

決して高価なプレゼントではないけれど、恋人からの思いが込められた素敵なプレゼントに心が温かくなりました。

 

くすっと笑える話や、心にジーンとくる話、不思議な話など、ユニークなお話がたくさん収められています。

ちょっとした空き時間に1話ずつ読めるのでオススメです。

 

「この声をきみに」のホームページでは8週にわたって朗読された本が紹介されているので、読書の秋にまた新しい本を読んでみようかなと思っています。