前回に続いて「最も美しいうつわ」を読みました。
こちらも中目黒SML監修の本です。
出版時期はこちらの本の方が先なのですが、前回紹介した「もっとうつわを楽しむ」を読んでからの方が自然に内容に入っていけるのかなと思ったのでこちらの本の紹介を後にしました。
安西水丸さんのコメントが帯になっています。
この本は器の窯元のインタビューと器の写真からなる全国の器の図鑑です。
民芸というとどこか昔懐かしいうつわを想像するかもしれませんが、ここで紹介されている器はスタイリッシュで今の時代でも素敵だなと思うものばかり。ずっと昔から変わらずに作られ続けているものなのに時が経っても古く感じないデザインがすごいなぁと思います。
写真の多い本ですがインタビューも充実しています。
どういう環境で制作しているのか、ものづくりに対する思いや作るものへのこだわりがしっかり取材されています。
制作風景はなかなか知ることができないので、器がどんな人に作られているのかということを知ることができてとても興味深かったです。
インタビューで1番心に残ったものを一つだけ。
益子でうつわを作っている鈴木稔さんのお話です。
鈴木さんは大学のサークルで陶芸を始め、卒業後は陶芸教室で働き、益子の高内秀剛さんの元で修行した後に独立。途中挫折しそうな出来事がありながらも益子焼一筋でうつわを作られています。
そんな鈴木さんはうつわを作る以外に、ワークショップをしながら全国をまわっているそうです。
忙しい合間を縫ってワークショップを行う理由がとても心に残りました。
今は大量に作って大量に売る時代じゃない。
ものも情報もあふれているなかから、なにかひとつを選ぶとき、つくっている人がどういう人で、どういう考えで、どういう場所でつくっていて、そうした必然性のなかからものが生まれていることに魅力を感じているんだと思う。
だから、お客さんが身近に感じる方法でつくって売っていきたい
私もものづくりの仕事に携わっていますが、大量生産の時代から少しづつ変わってきているように思います。
製品を購入するきっかけも、ただ性能やデザインがいいからというよりも、どんな思想で、どんな人によって作られているのかというところも見られているということを実感しています(私も特に好きなものを買う時は背景なども調べて検討しています)。
この本は2013年に出版されたものですが、うつわの世界ではもうずっと前にそういう段階にあり、作っているものが違っていても、最終的にお客さんが身近に感じる(つながりを感じる)ということが重要ということをこの本を通して教えていただいたような気がします。
それぞれの器にストーリーがあると思うと、ますますうつわの世界にはまってしまいそうです。
今自分が使っているうつわにはどんな物語があるのか、調べてみると楽しいかもしれません。