横浜美術館で開催されている「モネ これからの100年」に行きました。
モネが睡蓮の大装飾画の製作に着手してから100年経ったそうです。
この展示ではモネの初期から晩年までの作品21点と、モネに影響を受けた後世の作家の作品が66点集められています。
お盆休み中だったからか、展示は年配の方や、家族連れなど幅広い世代の方が見にきていました。
美術館の正面にはモネのハスの池をイメージして瓶に睡蓮が植えてありました。
蓮の花は朝から昼にかけて咲くそうです。
入り口前の展示(?)は写真撮影可で、記念写真が撮れます。
展示の構成
4部構成になっていました
I.新しい絵画へー立ち上がる色彩と筆触
モネの試行錯誤して描かれた初期の作品が展示されています。
「海辺の船」という作品では、海を表現するために距離で異なる色を塗り分けたり、波を表現するのに筆の運び方を工夫していました。
「ヴァランジュヴィルの風景」では遠近を表現するために葛飾北斎の浮世絵を参考にしているそうです。
II. 形なきものへのまなざしー光、大気、水
被写体と自分の間にある形のないものを表現しようと試みた作品が展示されています。
初期の工夫された色彩を引き継ぎながら、描いた場所の湿度や気温、それ以上の何かが伝わってくる、その場の空気を封じ込めたような作風に変わってきています。
霧のロンドンの街にぼんやり浮かぶ汽車の影とその蒸気が太陽に照らされて浮かび上がる、「霧の中の太陽」はモネの形のないものを描きたいという意図をよく表しているなと思いました。
また、このセクションにあった湯浅克俊さんの「RGB」という作品がとても興味深かったです。
この作品はそれぞれ赤、緑、青で色をつけた3枚の和紙を重ね、背後からライトで照らしたものです。
赤、緑、青の和紙が重なっているので正面から見ると黒っぽく、角度を変えて見ると別の色に見える不思議な絵です。正面から見た場合と、斜めから見た場合で光の透過率が変わるのを利用した作品なのかな...第2部のテーマのひとつの光を使った、ちょっと科学的な面白い作品でした。
III.モネへのオマージューさまざまな「引用」の形
モネの作品に影響を受けた後世の作家がモネの作品を引用した作品が展示されています。
絵、版画、写真、映像などさまざまな角度から表現されています。
映像作家の水野勝規さんの「holography」が印象に残りました。
モネの池の水面を季節を超えて定点撮影し、重ね合わせた映像です。緑の蓮の葉が浮かぶ池の底に、赤い葉っぱが沈んでいたり不思議な感じがします。
IV.フレームを超えてー拡張するイメージと空間
モネは睡蓮の作品をフレームを超え部屋いっぱいに描けたら...と考えて大作を作成したようです。
このセクションではモネの晩年の作品と、フレームを超えた後世の作家の作品が展示されています。
モネの晩年の作品は、被写体の輪郭が以前よりぼんやりし、色も彩度が落ちていてなんとなく寂しさを感じました。
感想
モネの絵に惹かれる理由
第2章の入り口に書かれていた
私が本当に描きたいのは
描くものと自分との間にある
「何か」なのです
というモネの言葉で、私がモネの絵に惹かれる理由がわかったような気がしました。
普段の生活やどこかに旅行に出かけたときに、この瞬間を残しておきたいと思うことがあります。
写真で撮ってみるとその時の瞬間が正確に記録できるのですが、何か足りないような感じがいつもしていました。
モネの絵は被写体を写真のように正確に描いたたものではありませんが、絵を見ているとその場所の温度や湿度に加えて、描いている人の気持ち(優しい、懐かしい、悲しいなど)が封じ込まれている感じがします。
私が好きな写真家の米田知子さんも写真を通して形のないものを表現されているのを思い出しました。
色彩以上に何か惹かれるものがあると思っていましたが、第2部の展示で納得できたような気がしました。
子ども用の解説が面白い
小さな子どもも楽しめるようにいくつかの絵には見所がわかりやすく説明されていて、メモを取っている子どもたちがたくさんいました。
子ども用の説明は大人が読んでも楽しめる内容だった(私はこの説明の方が楽しめた)ので、全部の絵にそういう説明があると楽しいかもと思いました。
モネの絵が少ないと思う人もいるかもしれない
企画の説明の最初に「モネはまだ生きている」という言葉にある通り、モネとモネの独創性を受け継いだ作家の展示なので、モネの作品がメインで展示されていると期待して見に行くとモネの作品が少なかったと思うかもしれません。
涼しさを感じられる今の季節にちょうどいい展示でした。
気になっている方はぜひ行ってみてください。
横浜美術館での展示は2018/9/24までです。