illustration3月号を読んでいて、ふと学生の時に読んでいたある雑誌を読み返したいなと思い出しました。
Re:S(リス)という2006年に創刊した季刊誌でいまは休刊しています。
大学の先輩から面白いよと貸していただいた雑誌だったので、手元になく中古品から探して読み返してみました。
編集長はillustrationで福田利之さんと対談していた藤本智士さんです。
雑誌の紹介文がとても素敵な文章だったのでそのまま引用します。
かけ足の世の中が
ぽろぽろと落としていった大切なものを
ひとつひとつ拾いあげていく
そんな雑誌を作ろうとおもいます
...
あたらしいとかふるいとかいう
単純なものさしを基準にするのではなく、
ほんとうにひつようなものを
じぶんのあたまや勘のようなもので
みわける力をよびもどさなければならないと思います。
わたしたちの暮らしのそばにしぜんにあるもの、
そういうスタンダードなもの。
これをわたしたちは思いきって
「ふつう」と訳そうと思います。
そんな「ふつう」について考えたり提案したりする雑誌です。
生活が便利になるに従い、なくなりつつあるものたちを取り上げ、それをあえて今使う理由や、これからも使っていくための提案をしています。
この雑誌を読んだ当時、私は写真部で活動していました。ちょうどフイルムからデジタルカメラへの転換期だったので、第2号で取り扱われていたフイルムの良さについて興味深く読んだのでした。
今回読んだのは創刊号です。水筒が特集されていました。
ペットボトルが普及しているけれど、水筒は温かい飲み物は暖かく、冷たい飲み物は冷たく保ち、ホッと一息つかせてくれます。
家に水筒はありますか?
私は4つ持っていました。
ステンレス魔法瓶、ガラス魔法瓶、ステンレスタンブラー(2つ)です。
ステンレス魔法瓶はお茶を入れて毎日会社へ持っていきます。
ガラス魔法瓶は臭いが付きづらいので、お白湯や紅茶を飲む時に。
赤いステンレスタンブラーは、ちょっと大きめのサイズでマグカップ二杯分入ります。保温性があるのでこの時期家で過ごす時に熱いコーヒーを入れて、ゆっくり飲むのに使っています。
青いタンブラーは夏に冷たいお茶をつめて持ち歩いています。
水筒なんて一つでいいじゃないと思いけれど、生活スタイルによって適したものがあります。
それぞれの人のスタンダード(ふつう)な水筒が違うのです。
なんだか面白いです。
話は変わって、この雑誌の中で私がとても心に残った言葉があります。
小説家の柴崎友香さんの「わたしにとっての定番品」というエッセイの一文です。
いつごろからか去年買った物が今年はもうどこにも売っていないことがふつうになったけれど、ほんとうにみんなそんなに新しいものばかり望んでいるんだろうか。毎日の生活には、何か珍しいことや新しいことも必要だけれど、それはどんどん作られる新製品の中にしかないんだろうか。
私の仕事はものを作る仕事。
製品自体決して安いものでもなく、毎年新しい製品を誰が買っているんだろう、そんなに必要なのだろうか?と開発に携わりながらずっと思っていたので、そう感じる人もやっぱりいるよねと思いました。
本当に必要なものは人によって少しづつ違うから、自分に必要な機能なものは何かを、その人が考えて選び、新しい機能が必要になったら今持っているものに付け足すことができたら面白そう。
10年以上前の雑誌ですが、何かを作る側も消費する側も、今こういう考え方が必要なのかもと思いました。
私にとっての「ふつう」は何か、ちょっとづつ考えてまた書いてみたいです。