思いついたときに書く日記

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「津軽こぎん刺し 技法と図案集」を読んで

ちょっと手の込んだ刺繍をしてポーチに仕立てたいなと思い、こぎん刺しの図案集を探していたところ弘前こぎん研究所監修のこの本を見つけました。

図案を写してすぐに始められる本はいろいろあったのですが、こぎん刺しができた背景にもちょっと興味がありこの本を読んでみました。

表紙は古いこぎん刺しの写真です。レースのような緻密さです。

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津軽地方は厳しい寒さから木綿が育ちにくく、木綿は贅沢品とされ、江戸時代にその地域に住む人々は藩から木綿の着物を着ることを禁じられていました。人々は防寒や布の補強のために、確実に手に入る麻布に麻の糸で刺し子を施し(さらに重ね着して寒さを凌いだ)たのがこぎん刺しの始まりです。

藩政がなくなり、木綿の使用の禁止が解かれると、やわらかく刺しやすい木綿糸が刺し子に使われるようになり、より複雑な模様に発展して、晴れ着に使われるまでに発展したそうです。さらに交通網が発展し、木綿の衣類が手に入りやすくなるとともにこぎん刺しは衰退していきました。

こぎん刺しが衰退して30年ほど経った頃、民芸運動が盛んになり、こぎん刺しを後の時代に伝える試みが続けられ現在に至っています。

 

私がこぎん刺しに惹かれたのは、こぎん刺しを見ると、作られた背景が思い浮かぶところです。残っているこぎん刺しの着物を見て行くと、気候の違い、仕事内容の違い、作り手の性格などこぎん刺しが生まれる背景によって模様にも違いが表れているのがわかります。

例えば、稲作地域の盛んな地域は袖が汚れたり消耗されやすいため、身頃にこぎん刺しを施し、擦り切れた襟や袖を付け替えることで着物をできるだけ長く着られるような工夫をしていたそうです(古いこぎん刺しが身頃だけ残っている理由に納得しました)。本当に厳しい環境に暮らしていた地域ではこぎん刺しをすることもままならかったためか、残っている着物も少ないとのことで、津軽地域の暮らしの厳しさも感じます。

厳しい環境の中、限られた材料で作られたこぎん刺しですが、細かな模様が隙間なく施されたこぎん刺しの着物を見ていると、作る人はこの作業を楽しみ、これを着る人は少し誇らしい気持ちになったのではないか、制限や厳しい気候で生活は苦しかったかも知れないですが、生活を楽しむことやこの地域人々の誇りが表れているような気がしました。古いこぎん刺しを眺めるとそういった背景を想像できるのが楽しいです。

 

自分ならどんなものを作れるのか、作ってみたいなと思ったら、こぎん刺しの基礎を参考に、小さな基礎模様から連続模様のこぎん刺しまで作ることができます。初めてこぎん刺しを始めるときに疑問に思う、刺しはじめから刺し終わりまで丁寧に説明があるので安心です。模様の図鑑もあるので慣れてきたら模様を見ながらパターンに起こして刺してみるのも楽しそう。

 

歴史の記述が多く、すぐに作ってみたい、色々なパターンを刺してみたいという方には向いていないかもしれませんが、こぎん刺しの背景を知って、刺し方の基本を理解したいという人には良い本だと思います。

ポーチを作るのに何の模様を刺そうか悩み中です。